「ギルデロイ・ロックハートのガイドブック――一いっ般ぱん家か庭ていの害がい虫ちゅう」
表紙には大きな写真が見える。波なみ打うつブロンド、輝かがやくブルーの瞳ひとみの、とてもハンサムな魔法使いだ。魔法界ではあたりまえのことだが、写真は動いていた。表紙の魔法使いは、――ギルデロイ・ロックハートなんだろうな、とハリーは思った――いたずらっぽいウィンクを投げ続けている。ウィーズリー夫人は写真に向かってにっこりした。
「あぁ、彼ってすばらしいわ。家庭の害虫についてほんとによくご存ぞん知じ。この本、とてもいい本だわ……」
「ママったら、彼にお熱なんだよ」フレッドはわざと聞こえるような囁ささやき声で言った。
「フレッド、バカなことを言うんじゃないわよ」
ウィーズリー夫人は、頬ほおをほんのり紅あからめていた。
「いいでしょう。ロックハートよりよく知っていると言うのなら、庭に出て、お手て並なみを見せていただきましょうか。あとでわたしが点てん検けんに行った時に、庭小人が一いっ匹ぴきでも残ってたら、その時後こう悔かいしても知りませんよ」
欠伸あくびをしながら、ぶつくさ言いながら、ウィーズリー三兄弟はだらだらと外に出た。ハリーはそのあとに従った。広い庭で、ハリーにはこれこそ庭だと思えた。ダーズリー一家はきっと気に入らないだろう――雑ざっ草そうが生おい茂しげり、芝しば生ふは伸び放ほう題だいだった。しかし、壁かべの周まわりは曲がりくねった木でぐるりと囲まれ、花か壇だんという花壇には、ハリーが見たこともないような植物が溢あふれるばかりに茂っていたし、大きな緑色の池はカエルでいっぱいだった。
「マグルの庭にも飾かざり用の小人が置いてあるの、知ってるだろ」ハリーは芝生を横切りながらロンに言った。
「あぁ、マグルが庭小人だと思っているやつは見たことがある」
ロンは腰こしを曲げて芍しゃく薬やくの茂みに首を突つっ込こみながら答えた。