「太ったサンタクロースの小さいのが釣つり竿ざおを持ってるような感じだったな」
突とつ然ぜんドタバタと荒あらっぽい音がして、芍薬の茂みが震ふるえ、中からロンが立ち上がった。
「これぞ」ロンが重々しく言った。「ほんとの庭小人なのだ」
「放はなせ 放しやがれ」小人はキーキー喚わめいた。
なるほど、サンタクロースとは似ても似つかない。小さく、ゴワゴワした感じで、ジャガイモそっくりの凸でこ凹ぼこした大きな禿はげ頭あたまだ。硬かたい小さな足でロンを蹴け飛とばそうと暴れるので、ロンは腕うでを伸ばして小人をつかんでいた。それから足首をつかんで小人を逆さかさまにぶら下げた。
「こうやらないといけないんだ」
ロンは小人を頭の上に持ち上げて「放はなせ」小人が喚わめいた投なげ縄なわを投げるように大きく円を描えがいて小人を振ふり回しはじめた。ハリーがショックを受けたような顔をしているので、ロンが説明した。「小人を傷きずつけるわけじゃないんだ。――ただ、完全に目を回させて、巣す穴あなに戻もどる道がわかんないようにするんだ」
ロンが小人の踵かかとから手を放すと、小人は宙ちゅうを飛んで、五、六メートル先の垣かき根ねの外側の草むらにドサッと落ちた。
「それっぽっちか」フレッドが言った。「俺おれなんかあの木の切きり株かぶまで飛ばしてみせるぜ」
ハリーもたちまち小人がかわいそうだと思わないようになった。捕ほ獲かく第一号を垣根の向こうにそっと落としてやろうとしたとたん、ハリーの弱気を感じ取った小人が剃かみ刀そりのような歯をハリーの指に食い込ませたのだ。ハリーは振り払おうとしてさんざんてこずり、ついに――、
「ひゃー、ハリー、十五、六メートルは飛んだぜ……」
宙を舞まう庭小人でたちまち空が埋うめ尽つくされた。