「隠かくれ穴あな」での生活はプリベット通りとは思いっきり違っていた。ダーズリー一家は何事も四し角かく四し面めんでないと気に入らなかったが、ウィーズリー家けはへんてこで、度ど肝ぎもを抜かれることばかりだった。台所の暖だん炉ろの上にある鏡かがみを最初に覗のぞき込こんだ時、ハリーはどっきりした。鏡が大声をあげたからだ。「だらしないぞ、シャツをズボンの中に入れろよ」屋や根ね裏うらお化ばけは、家の中が静かすぎると思えば、喚わめくし、パイプを落とすし、フレッドとジョージの部屋から小さな爆ばく発はつ音おんがあがっても、みんなあたりまえという顔をしていた。しかし、ロンの家での生活でハリーがいちばん不ふ思し議ぎだと思ったのは、おしゃべり鏡でも、うるさいお化けでもなく、みんながハリーを好いているらしいということだった。
ウィーズリーおばさんは、ハリーのソックスがどうのこうのと小うるさかったし、食事のたびに無理やり四回もお代わりさせようとした。ウィーズリーおじさんは、夕食の席せきでハリーを隣となりに座らせたがり、マグルの生活について次から次と質しつ問もん攻ぜめにし、電気のプラグはどう使うのかとか、郵ゆう便びんはどんなふうに届くのかなどを知りたがった。
「おもしろい」
電話の使い方を話して聞かせると、おじさんは感心した。
「まさに、独どく創そう的てきだ。マグルは魔法を使えなくてもなんとかやっていく方法を、実にいろいろ考えるものだ」
「隠れ穴」に来てから一週間ほど経たった、ある上じょう天てん気きの朝、ホグワーツからハリーに手紙が届いた。朝食をとりにロンと一いっ緒しょに台所に下りていくと、ウィーズリー夫婦ふうふとジニーがもうテーブルに着いていた。ハリーを見たとたん、ジニーはオートミール用の深皿を、うっかり引ひっくり返して床に落としてしまい、皿はカラカラと大きな音をたてた。ハリーがジニーのいる部屋に入ってくるたびに、どうもジニーは物を引っくり返しがちだった。テーブルの下に潜もぐって皿を拾ひろい、またテーブルの上に顔を出した時には、ジニーは真まっ赤かな夕日のような顔をしていた。ハリーは何にも気がつかないふりをしてテーブルに着き、ウィーズリーおばさんが出してくれたトーストをかじった。