「ハリー、はっきり発音しないとだめよ」
ウィーズリーおばさんが注意した。ジョージが鉢に手を突っ込こんだ。
「それに、間違いなく正しい火格子から出ることね」
「正しいなんですか」
ハリーは心もとなさそうに尋たずねた。ちょうど燃え上がった炎が、ジョージをヒュッとかき消した時だった。
「あのね、魔法使いの暖炉といっても、本当にいろいろあるのよ。ね でもはっきり発音さえすれば――」
「ハリーは大丈夫だよ、モリー。うるさく言わなくとも」
ウィーズリーおじさんが煙えん突とつ飛ひ行こう粉ごなをつまみながら言った。
「でも、あなた。ハリーが迷まい子ごになったら、おじ様とおば様になんと申し開きできます」
「あの人たちはそんなこと気にしません。僕が煙突の中で迷子になったら、ダドリーなんか、きっと最高に笑えるって喜びます。心配しないでください」ハリーは請うけ合った。
「そう……それなら……アーサーの次にいらっしゃいな。いいこと、炎の中に入ったら、どこに行くかを言うのよ――」
「肘ひじは引っ込めておけよ」ロンが注意した。
「それに目は閉じてね。煤すすが――」ウィーズリーおばさんだ。
「もぞもぞ動くなよ。動くと、とんでもない暖炉に落ちるかもしれないから――」とロン。
「だけど慌あわてないでね。あんまり急いで外に出ないで、フレッドとジョージの姿が見えるまで待つのよ」
なんだかんだを必ひっ死しで頭に叩たたき込んで、ハリーは煙突飛行粉をひとつまみ取り、暖炉の前に進み出た。深しん呼こ吸きゅうして、粉を炎に投げ入れ、ずいと中に入った。炎は暖かいそよ風のようだった。ハリーは口を開いた。とたんにいやというほど熱い灰を吸すい込こんだ。