「ダ、ダイア、ゴン横よこ丁ちょう」咽むせながら言った。
まるで巨大な穴に渦うずを巻いて吸い込まれていくようだった。高速で回転しているらしい……耳が聞こえなくなるかと思うほどの轟ごう音おんがする。ハリーは目を開いていようと努力したが、緑色の炎の渦で気分が悪くなった。……何か硬かたいものが肘ひじにぶつかったので、ハリーはしっかりと肘を引いた。回る……回る……今度は冷たい手で頬ほおを打たれるような感じがした。……メガネ越ごしに目を細めて見ると、輪りん郭かくのぼやけた暖だん炉ろが次々と目の前を通り過ぎ、その向こう側の部屋がチラッチラッと見えた。……ベーコン・サンドイッチが胃い袋ぶくろの中で引っくり返っている……ハリーはまた目を閉とじた。止まってくれるといいのに。――やおら、ハリーは前のめりに倒れた。冷たい石に顔を打って、メガネが壊こわれるのがわかった。
くらくら、ズキズキしながら、煤すすだらけでハリーはそろそろと立ち上がり、壊れたメガネを目のところにかざした。ハリーの他ほかには誰もいない。でもいったいここはどこなのか、さっぱりわからなかった。わかったことといえば、ハリーは石の暖炉の中に突っ立っていたし、その暖炉は、大きな魔法使いの店の薄うす明あかりの中にあった。――売っている物はどう見ても、ホグワーツ校のリストには載のりそうにもない物ばかりだ。
手前のショーケースには、クッションに載のせられたしなびた手、血に染そまったトランプ、それに義ぎ眼がんがギロリと目をむいていた。壁かべからは邪じゃ悪あくな表情の仮面が見下ろし、カウンターには人じん骨こつがばら積みになっている。天てん井じょうからは錆さびついた刺とげだらけの道具がぶら下がっていた。もっと悪いことに、埃ほこりで汚れたウィンドーの外に見える、暗い狭せまい通りは、絶ぜっ対たいにダイアゴン横丁ではなかった。