「あの家族は厄やっ介かいよ。無理して火傷やけどしないように」
「何かね、わたしがルシウス・マルフォイにかなわないとでも」
ウィーズリーおじさんはムッとしたが、ハーマイオニーの両親がいるのに気づくと、たちまちそちらに気を取られた。壮そう大だいな大だい理り石せきのホールの端はしから端まで伸びるカウンターのそばに、二人は不安そうに佇たたずんで、ハーマイオニーが紹しょう介かいしてくれるのを待っていた。
「なんと、マグルのお二人がここに」
ウィーズリーおじさんがうれしそうに呼びかけた。
「一いっ緒しょに一いっ杯ぱいいかがですか そこに持っていらっしゃるのは何ですか あぁ、マグルのお金を換かえていらっしゃるのですか。モリー、見てごらん」
おじさんはグレンジャー氏しの持っている十ポンド紙し幣へいを指ゆび差さして興こう奮ふんしていた。
「あとで、ここで会おう」ロンはハーマイオニーにそう呼びかけ、ウィーズリー一家とハリーは、一緒に小こ鬼おにに連れられて、地下の金庫へと向かった。
金庫に行くには、小鬼の運転する小さなトロッコに乗って、地下トンネルのミニ線路の上を矢のように走るのだ。ハリーは、ウィーズリー家けの金庫までは猛もうスピードで走る旅を楽しんだが、金庫が開かれた時は、「夜の闇ノクターン横よこ丁ちょう」に着いた時より、もっとずっと気が滅め入いった。シックル銀ぎん貨かがほんのひと握にぎりと、ガリオン金きん貨かが一枚しかなかったのだ。ウィーズリーおばさんは隅すみっこのほうまでかき集め、ありったけ全部をハンドバッグに入れた。ハリーはみんなが自分の金庫に来た時、もっと申し訳わけなく思った。金庫の中身がなるべくみんなに見えないようにしながら、ハリーは急いでコインをつかみ取り、革かわの袋ふくろに押し込こんだ。