「まあ、よかった。来たのね」ウィーズリーおばさんは息を弾はずませ、何度も髪かみを撫なでつけていた。「もうすぐ彼に会えるわ……」
ギルデロイ・ロックハートの姿がだんだん見えてきた。座っている机の周まわりには、自分自身の大きな写真がぐるりと貼はられ、人ひと垣がきに向かって写真がいっせいにウインクし、輝かがやくような白い歯を見せびらかしていた。本物のロックハートは、瞳ひとみの色にぴったりの忘わすれな草ぐさ色のローブを着ていた。波打つ髪かみに、魔法使いの三さん角かく帽ぼうを小こ粋いきな角度でかぶっている。
気の短そうな小男がその周まわりを踊おどり回って、大きな黒いカメラで写真を撮とっていた。目が眩くらむようなフラッシュを焚たくたびに、ポッポッと紫の煙が上がった。
「そこ、どいて」
カメラマンがアングルをよくするために後ずさりし、ロンに向かって低く唸うなるように言った。
「日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶんの写真だから」
「それがどうしたってんだ」ロンはカメラマンに踏ふまれた足をさすりながら言った。
それが聞こえて、ギルデロイ・ロックハートが顔を上げた。まずロンを見て――それからハリーを見た。じっと見つめた。それから勢いきおいよく立ち上がり、叫さけんだ。
「もしや、ハリー・ポッターでは」
興こう奮ふんした囁ささやき声があがり、人ひと垣がきがパッと割われて道を開けた。ロックハートが列に飛び込み、ハリーの腕うでをつかみ、正面に引き出した。人垣がいっせいに拍はく手しゅした。ロックハートがハリーと握あく手しゅしているポーズをカメラマンが写そうとして、ウィーズリー一家の頭上に厚い雲が漂ただようほどシャッターを切りまくり、ハリーは顔がほてった。
「ハリー、にっこり笑って」ロックハートが輝くような歯を見せながら言った。
「一いっ緒しょに写れば、君と私とで一面大見出し記事ですよ」
やっと手を放はなしてもらった時には、ハリーはしびれて指の感かん覚かくがなくなっていた。ウィーズリー一家のところへこっそり戻もどろうとしたが、ロックハートはハリーの肩に腕を回して、がっちりと自分のそばに締しめつけた。