別べっ世せ界かいだった。車のタイヤはふわふわした雲の海を掻かき、眩まばゆい白はく熱ねつの太陽の下に、どこまでも明るいブルーの空が広がっていた。
「あとは飛行機だけ気にしてりゃいいな」とロンが言った。
二人は顔を見合わせて笑った。しばらくの間、笑いが止まらなかった。
まるですばらしい夢の中に飛び込こんだようだった。旅をするならこの方法以外にありえないよ、とハリーは思った。
――白しら雪ゆきのような雲の渦うずや塔とうを抜け、車一いっ杯ぱいの明るい暖あたたかい陽ひの光、計けい器き盤ばんの下の小こ物もの入れにはヌガーがいっぱい。それに、ホグワーツの城の広々とした芝しば生ふに、はなばなしくスイーッと着ちゃく陸りくしたときのフレッドやジョージの羨うらやましそうな顔が見えるようだ。
北へ北へと飛びながら、二人は定てい期き的てきに汽き車しゃの位置をチェックした。雲の下に潜もぐるたびに違った景け色しきが見えた。ロンドンはあっという間に過ぎ去り、すっきりとした緑の畑が広がり、それも広こう大だいな紫むらさきがかった荒こう野やに変わり、おもちゃのような小さな教きょう会かいを囲んだ村々が見え、色とりどりの蟻ありのような車が、忙いそがしく走り回っている大きな都市も見えた。
何事もなく数時間が過ぎると、さすがにハリーも飽あきてきた。ヌガーのおかげで喉のどがカラカラになってきたのに、飲む物がなかった。ロンもハリーもセーターを脱ぬぎ捨すてたが、ハリーのシャツは座ざ席せきの背にべったり張はりつき、メガネは汗あせで鼻からずり落ちてばかりいた。おもしろいと思っていた雲の形も、もうどうでもよくなり、ハリーは、ずーっと下を走っている汽車の中を懐なつかしく思い出していた。丸まっちい魔女のおばさんが押してくるカートには、ひんやりと冷たい魔女かぼちゃジュースがあるのに……。いったいどうして、九と四分の三番線に行けなかったんだろう