「大だい丈じょう夫ぶかい」ハリーが慌あわてて聞いた。
「杖つえが」ロンの声が震ふるえている。「僕ぼくの杖、見て」
ほとんど真っ二つに折おれていた。杖の先せん端たんが、裂さけた木もく片へんにすがって辛かろうじてだらりとぶら下がっている。
ハリーは、学校に行けばきっと直してくれるよ、と言いかけたが、一ひと言ことも言わずに口をつぐまなければならなかった。しゃべりかけたとたん、ハリーの座っている側がわの車の脇わき腹ばらに、闘とう牛ぎゅうの牛が突っ込こんできたようなパンチが飛んできたのだ。ハリーはロンのほうに横ざまに突き飛ばされた。同時に、車の屋や根ねに同じぐらい強力なヘビーブローがかかった。
「何事だ――」
ウィンドーから外を覗のぞいたロンが息を呑のんだ。ハリーが振ふり返ると、ちょうど、大ニシキヘビのような太い枝が、窓めがけて一いち撃げきを食らわせるところだった。ぶつかった木が二人を襲おそっている。幹みきを「く」の字に曲げ、節ふしくれだった大枝で、ところかまわず車に殴なぐりかかってきた。
「ウヮヮァ」
ねじれた枝のパンチでドアが凹へこみ、ロンが叫さけんだ。小枝の拳こぶしが雨あられとブローを浴あびせ、ウィンドーはビリビリ震え、巨大ハンマーのような太い大枝が、狂きょう暴ぼうに屋根を打ち、凹ませている――。
「逃げろ」
ロンが叫びながら体ごとドアにぶつかって行ったが、次の瞬しゅん間かん、枝の猛もう烈れつなアッパーカットを食らい、吹っ飛ばされてハリーの膝ひざに逆ぎゃく戻もどりしてきた。
「もうダメだ」
屋根が落ち込んできて、ロンが呻うめいた。すると、急に車のフロアが揺ゆれはじめた。――エンジンが生き返った。