ハリーがクルッと振ふり向くと――出た 冷たい風に黒いローブをはためかせて、セブルス・スネイプその人が立っていた。脂あぶらっこい黒い髪かみを肩まで伸ばし、痩やせた体、土つち気け色の顔に鉤かぎ鼻ばなのその人は、口元に笑えみを浮うかべていた。そのほくそ笑みを見ただけで、ハリーとロンには、どんなにひどい目に遭あうかがよくわかった。
「ついてきなさい」スネイプが言った。
二人は顔を見合わせる勇気もなく、スネイプに従って階段を上がり、松明たいまつに照らされた、がらんとした玄げん関かんホールに入った。大おお広ひろ間まからおいしそうな匂においが漂ただよってきた。しかし、スネイプは二人を、暖かな明るい場所から遠ざかるほうへ、地ち下か牢ろうに下りる狭せまい石いし段だんへと誘いざなった。
「入りたまえ」
冷たい階段の中ほどで、スネイプはドアを開け、その中を指ゆび差さした。
二人は震ふるえながらスネイプの研けん究きゅう室しつに入った。薄うす暗くらがりの壁かべの棚たなの上には、大きなガラス容よう器きが並べられ、いまのハリーには名前を知りたくもないような、気き色しょくの悪いものがいろいろ浮ういていた。真っ暗な暖だん炉ろには火の気もない。スネイプはドアを閉め、二人に向き直った。
「なるほど」
スネイプは猫ねこ撫なで声を出した。
「有名なハリー・ポッターと、忠ちゅう実じつなご学友のウィーズリーは、あの汽車ではご不ふ満まんだった。どーんとご到とう着ちゃくになりたい。お二人さん、それがお望みだったわけか」
「違います、先生。キングズ・クロス駅の柵さくのせいで、あれが――」
「黙だまれ」スネイプは冷たく言った。
「あの車は、どう片づけた」
ロンが絶ぜっ句くした。スネイプは人の心を読めるのでは、とハリーはこれまでにも何度かそう思ったことがあった。しかし、わけはすぐわかった。スネイプが今日の「夕ゆう刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん」をくるくると広げた。