「ここでお食べなさい。終わったらまっすぐに寮りょうにお帰りなさい。私わたくしも歓かん迎げい会かいに戻もどらなければなりません」
先生がドアを閉めて行ってしまうと、ロンはヒューッと低く長い口くち笛ぶえを吹ふいた。
「もうだめかと思ったよ」サンドイッチをガバッとつかみながら、ロンが言った。
「僕ぼくもだよ」ハリーもひとつつかんだ。
「だけど、僕たちって信じられないぐらいついてないぜ」
ロンがチキンとハムをいっぱい詰つめ込こんだ口をモゴモゴさせて言った。
「フレッドとジョージなんか、あの車を五回も六回も飛ばしてるのに、あの二人は一度だってマグルに見られてないんだ」
ロンはゴクンと飲み込こむと、また大口を開けてかぶりついた。
「だけど、どうして柵さくを通り抜けられなかったんだろ」
ハリーは肩をちょっとすくめて、わからないという仕し種ぐさをした。
「だけど、これからは僕たち慎しん重ちょうに行動しなくちゃ」
ハリーは冷たい魔女かぼちゃジュースを、喉のどを鳴らして飲みながら言った。
「歓迎会に行きたかったなぁ……」
「マクゴナガル先生は僕たちが目立ってはいけないと考えたんだ。車を飛ばせて到とう着ちゃくしたのが格かっ好こいいなんて、みんながそう思ったらいけないって」ロンが神しん妙みょうに言った。
サンドイッチを食べたいだけ食べると大皿は空からになるとまた独ひとりでにサンドイッチが現れた、二人はスネイプの研けん究きゅう室しつを出て、通かよいなれた通つう路ろをグリフィンドール塔とうに向かってとぼとぼと歩いた。城は静まり返っている。歓迎会は終わったらしい。ボソボソ囁ささやく肖しょう像ぞうや、ギーギーと軋きしむ鎧よろいをいくつか通り過ぎ、狭せまい石いし段だんを上って、やっと寮への秘ひ密みつの入口が隠かくされている廊ろう下かにたどり着いた。ピンクの絹きぬのドレスを着た、とても太ふとった婦人レディの油あぶら絵えが掛かかっている。