「……車を盗ぬすみ出すなんて、退たい校こう処しょ分ぶんになってもあたりまえです。首を洗あらって待ってらっしゃい。承しょう知ちしませんからね。車がなくなっているのを見て、わたしとお父とうさまがどんな思いだったか、おまえはちょっとでも考えたんですか……」
ウィーズリー夫ふ人じんの怒ど鳴なり声が、本物の百倍に拡かく大だいされて、テーブルの上の皿もスプーンもガチャガチャと揺ゆれ、声は石の壁かべに反はん響きょうして鼓こ膜まくが裂さけそうにワンワン唸うなった。大広間にいた全員があたりを見回し、いったい誰が「吼えメール」をもらったのだろうと探していた。ロンは椅い子すに縮ちぢこまって小さくなり、真まっ赤かな額ひたいだけがテーブルの上に出ていた。
「……昨さく夜やダンブルドアからの手紙が来て、お父さまは恥はずかしさのあまり死んでしまうのでは、と心配しました。こんなことをする子に育てた覚えはありません。おまえもハリーも、まかり間違えば死ぬところだった……」
ハリーは、いつ自分の名前が飛び出すかと覚かく悟ごして待っていた。鼓膜がズキズキするぐらいの大声を、必ひっ死しで聞こえていないふりをしながら聞いていた。
「……まったく愛あい想そが尽つきました。お父さまは役所で尋じん問もんを受けたのですよ。みんなおまえのせいです。今度ちょっとでも規き則そくを破ってごらん。わたしたちがおまえをすぐ家に引ひっ張ぱって帰ります」
耳がジーンとなって静かになった。ロンの手から落ちていた赤い封筒は、炎となって燃え上がり、チリチリと灰になった。ハリーとロンはまるで津つ波なみの直ちょく撃げきを受けたあとのように呆ぼう然ぜんと椅子にへばりついていた。何人かが笑い声をあげ、だんだんとおしゃべりの声が戻もどってきた。ハーマイオニーは「バンパイヤとバッチリ船ふな旅たび」の本を閉じ、ロンの頭のてっぺんを見下ろして言った。