「やぁ、みなさん」
ロックハートは集まっている生徒を見回して、こぼれるように笑いかけた。
「スプラウト先生に、『暴れ柳』の正しい治ち療りょう法ほうをお見せしていましてね。でも、私わたくしのほうが先生より薬やく草そう学がくの知ち識しきがあるなんて、誤ご解かいされては困りますよ。たまたま私わたくし、旅の途と中ちゅう、『暴れ柳』というエキゾチックな植物に出で遭あったことがあるだけですから……」
「みんな、今日は三号温室へ」
スプラウト先生は普ふ段だんの快かい活かつさはどこへやら、不ふ機き嫌げんさが見え見えだった。
興きょう味み津しん々しんの囁ささやきが流れた。これまで一号温室でしか授じゅ業ぎょうがなかった。――三号温室にはもっと不ふ思し議ぎで危き険けんな植物が植うわっている。スプラウト先生は大きな鍵かぎをベルトから外はずし、ドアを開けた。天てん井じょうからぶら下がった、傘かさほどの大きさがある巨大な花の強きょう烈れつな香かおりに混じって、湿しめった土と肥ひ料りょうの臭においが、プンとハリーの鼻をついた。ハリーはロンやハーマイオニーと一緒に中に入ろうとしたが、ロックハートの手がすっと伸びてきた。
「ハリー 君と話したかった。――スプラウト先生、彼が二、三分遅おくれてもお気になさいませんね」
スプラウト先生のしかめっ面つらを見れば、「お気になさる」ようだったが、ロックハートはかまわず、「お許しいただけまして」と言うなり、彼女の鼻先でピシャッとドアを閉めた。
「ハリー」ロックハートは首を左右に振ふり、そのたびに白い歯が太陽を受けて輝いた。
「ハリー、ハリー、ハリー」
何がなんだかさっぱりわからなくて、ハリーは何も言えなかった。