「私わたし、あの話を聞いたとき――もっとも、みんな私が悪いのですがね、自分を責せめましたよ」
ハリーはいったい何のことかわからなかった。そう言おうと思っていると、ロックハートが言葉を続けた。
「こんなにショックを受けたことは、これまでになかったと思うぐらい。ホグワーツまで車で飛んでくるなんて まぁ、もちろん、なぜ君がそんなことをしたのかはすぐにわかりましたが。目立ちましたからね。ハリー、ハリー、ハリー」
話していないときでさえ、すばらしい歯は並ならびを一本残らず見せつけることが、どうやったらできるのか驚おどろきだった。
「有名になるという蜜みつの味を、私わたしが教えてしまった。そうでしょう 『有ゆう名めい虫むし』を移してしまった。新聞の一面に私と一いっ緒しょに載のってしまって、君はまたそうなりたいという思いをこらえられなかった」
「あの――先生、違います。つまり――」
「ハリー、ハリー、ハリー」
ロックハートは手を伸ばしてハリーの肩をつかみながら言った。
「わかりますとも。最初のほんの一口で、もっと食べたくなる――君が、そんな味をしめるようになったのは、私のせいだ。どうしても人を酔よわせてしまうものでしてね。――しかしです、青年よ、目立ちたいからといって、車を飛ばすというのはいけないですね。落ち着きなさい。ね もっと大きくなってから、そういうことをする時間がたっぷりありますよ。
えぇ、えぇ、君が何を考えているか、私にはわかります 『彼はもう国こく際さい的てきに有名な魔法使いだから、落ち着けなんて言ってられるんだ』ってね。しかしです、私が十二歳さいの時には君と同じぐらい無む名めいでした。むしろ、君よりもずっと無名だったかもしれない。つまり、君の場合は少しは知っている人がいるでしょう『名前を呼んではいけないあの人』とかなんとかで」