ロックハートはチラッとハリーの額ひたいの稲いな妻ずま形がたの傷きずを見た。
「わかってます。わかっていますとも。『週しゅう刊かん魔ま女じょ』の『チャーミング・スマイル賞しょう』に五回も続けて私が選ばれたのに比べれば、君のはたいしたことではないでしょう。――それでも初めはそれぐらいでいい。ハリー、初めはね」
ロックハートはハリーに思いっきりウインクすると、すたすたと行ってしまった。ハリーは一いっ瞬しゅん呆ぼう然ぜんと佇たたずんでいたが、ふと、温室に入らなければならないことを思い出してドアを開け、中に滑すべり込こんだ。スプラウト先生は温室の真ん中に、架か台だいを二つ並べ、その上に板を置いてベンチを作り、その後ろに立っていた。ベンチの上に色いろ違ちがいの耳当てが二十個ぐらい並んでいる。ハリーがロンとハーマイオニーの間に立つと、先生が授じゅ業ぎょうを始めた。
「今日はマンドレイクの植うえ換かえをやります。マンドレイクの特とく徴ちょうがわかる人はいますか」
みんなが思ったとおり、一番先にハーマイオニーの手が挙あがった。
「マンドレイク、別名マンドラゴラは強力な回かい復ふく薬やくです」
いつものように、ハーマイオニーの答えはまるで教科書を丸まる呑のみにしたようだった。
「姿すがた形かたちを変えられたり、呪のろいをかけられたりした人を元の姿に戻もどすのに使われます」
「たいへんよろしい。グリフィンドールに一〇点」スプラウト先生が言った。
「マンドレイクはたいていの解げ毒どく剤ざいの主しゅ成せい分ぶんになります。しかし、危き険けんな面もあります。誰かその理由が言える人は」
ハーマイオニーの手が勢いきおいよく上がった拍ひょう子しに、危あやうくハリーのメガネを引っかけそうになった。
「マンドレイクの泣き声は、それを聞いた者にとって命取りになります」
よどみない答えだ。