昼休みのベルが鳴り、ハリーはほっとした。脳のうみそが、絞しぼったあとのスポンジのようになった気がした。みんながぞろぞろと教室を出ていったが、ハリーとロンだけが取り残され、ロンは癇かん癪しゃくを起こして、杖をバンバン机に叩たたきつけていた。
「こいつめ……役立たず……コンチクショー」
「家に手紙を書いて別なのを送ってもらえば」
杖が連れん発ぱつ花火のようにパンパン鳴るのを聞きながらハリーが言った。
「あぁ、そうすりゃ、また『吼ほえメール』が来るさ。『杖が折おれたのは、おまえが悪いからでしょう――』ってね」
今度はシューシューいいはじめた杖をカバンに押し込みながら、ロンが答えた。
昼食の席せきで、ハーマイオニーが「変へん身しん術じゅつ」で作った完かん璧ぺきなコートのボタンをいくつも二人に見せつけるので、ロンはますます機嫌を悪くした。
「午後のクラスはなんだっけ」ハリーは慌あわてて話わ題だいを変えた。
「『闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ』よ」ハーマイオニーがすぐ答えた。
「君、ロックハートの授じゅ業ぎょうを全部小さいハートで囲んであるけど、どうして」
ロンがハーマイオニーの時間割を取り上げて聞いた。
ハーマイオニーは真まっ赤かになって時間割を引ったくり返した。
昼食を終え、三人は中庭に出た。曇り空だった。ハーマイオニーは石いし段だんに腰こし掛かけて、「バンパイアとバッチリ船ふな旅たび」をまた夢む中ちゅうになって読みはじめた。ハリーはロンと立ち話でしばらくクィディッチのことを話していたが、ふとじっと見つめられているような気がした。目を上げると、薄うす茶ちゃ色いろの髪かみをした小さな少年が、その場に釘くぎづけになったようにじっとハリーを見つめていた。ハリーはこの少年が昨さく夜や組分け帽ぼう子しをかぶったところを見た。少年はマグルのカメラのような物をしっかりつかんでいて、ハリーが目を向けたとたん、顔を真っ赤にした。