「ひとこと言っておきましょう。君の経けい歴れきでは、いまの段だん階かいでサイン入り写真を配るのは賢けん明めいとは言えないね――はっきり言って、ハリー、すこーし思い上がりだよ。そのうち、私のように、どこへ行くにも写真を一ひと束たば準じゅん備びしておくことが必要になるときがくるかもしれない。しかしですね――」ここでロックハートはカラカラッと満まん足ぞくげに笑った。「君はまだまだその段だん階かいではないと思いますね」
教室の前まで来て、ロックハートはやっとハリーを放はなした。ハリーはローブをギュッと引ひっ張ぱってシワを伸ばしてから、一番後ろの席せきまで行ってそこに座り、脇わき目めも振ふらずにロックハートの本を七冊全部、目の前に山のように積み上げた。そうすればロックハートの実じつ物ぶつを見ないですむ。
クラスメートが教室にドタバタと入ってきた。ロンとハーマイオニーが、ハリーの両りょう脇わきに座った。
「顔で目め玉だま焼やきができそうだったよ」ロンが言った。
「クリービーとジニーがどうぞ出で遭あいませんように、だね。じゃないと、二人でハリー・ポッター・ファンクラブを始めちゃうよ」
「やめてくれよ」ハリーが遮さえぎるように言った。
「ハリー・ポッター・ファンクラブ」なんて言葉はロックハートには絶ぜっ対たい聞かれたくない言葉だ。
クラス全員が着ちゃく席せきすると、ロックハートは大きな咳せき払ばらいをした。みんなしんとなった。ロックハートは生徒のほうにやってきて、ネビル・ロングボトムの持っていた「トロールとのとろい旅たび」を取り上げ、ウインクをしている自分自身の写真のついた表ひょう紙しを高々と掲かかげた。