「チッチッチ――私わたくしの好きな色はライラック色だということを、ほとんど誰も覚えていないようだね。『雪ゆき男おとことゆっくり一年』の中でそう言っているのに。『狼おおかみ男おとことの大いなる山歩き』をもう少ししっかり読まなければならない子も何人かいるようだ――第十二章ではっきり書いているように、私わたくしの誕生日の理り想そう的てきな贈り物は、魔法界と、非ひ魔法界のハーモニーですね。――もっとも、オグデンのオールド・ファイア・ウィスキーの大おお瓶びんでもお断ことわりはいたしませんよ」
ロックハートはもう一度クラス全員にいたずらっぽくウインクした。ロンは、もう呆あきれてものが言えない、という表情でロックハートを見つめていた。前列に座っていたシェーマス・フィネガンとディーン・トーマスは、声を押し殺して笑っていた。ところが、ハーマイオニーはロックハートの言こと葉ばにうっとりと聞き入っていて、突とつ然ぜんロックハートが彼女の名前を口にしたのでびくっとした。
「……ところが、ミス・ハーマイオニー・グレンジャーは、私わたくしの密ひそかな大たい望もうを知ってましたね。この世界から悪を追い払はらい、ロックハート・ブランドの整せい髪はつ剤ざいを売り出すことだとね。――よくできました それに――」ロックハートは答案用紙を裏うら返がえした。「満点です ミス・ハーマイオニー・グレンジャーはどこにいますか」
ハーマイオニーの挙あげた手が震ふるえていた。
「すばらしい」ロックハートがにっこりした。「まったくすばらしい グリフィンドールに一〇点あげましょう では、授じゅ業ぎょうですが……」
ロックハートは机の後ろに屈かがみ込こんで、覆おおいのかかった大きな籠かごを持ち上げ、机の上に置いた。