「遅おそいぞハリー。どうかしたか」ウッドがきびきびと言った。
「グラウンドに出る前に、諸しょ君くんに手て短みじかに説明しておこう。ひと夏かけて、まったく新しい練習方法を編あみ出したんだ。これなら絶ぜっ対たい、いままでとはできが違う‥‥‥」
ウッドはクィディッチ・ピッチの大きな図を掲かかげた。図には線やら矢印やらバッテンがいくつも、色とりどりのインクで書き込まれている。ウッドが杖つえを取り出して図を叩たたくと、矢印が図の上で毛虫のようにもぞもぞ動きはじめた。ウッドが新しん戦せん略りゃくについての演えん説ぜつをぶち上げはじめると、フレッド・ウィーズリーの頭がことんとアリシア・スピネットの肩に乗っかり、いびきをかきはじめた。
一枚目の説明にほとんど二十分かかった。その下から二枚目、さらに三枚目が出てきた。ウッドが延えん々えんとぶち上げ続けるのを聞きながら、ハリーは、ぼーっと夢ゆめ見み心ごこ地ちになっていった。
「ということで――」
やっとのことで、ウッドがそう言うのが聞こえ、いまごろ城ではどんな朝食を食べているんだろうと、おいしい空くう想そうに耽ふけっていたハリーは、突とつ然ぜん現実に引き戻もどされた。
「諸しょ君くん、わかったか 質問は」
「質問、オリバー」急に目が覚めたジョージが聞いた。
「いままで言ったこと、どうして昨日きのうのうちに、俺おれたちが起きてるうちに言ってくれなかったんだい」
ウッドはむっとした。
「いいか、諸君、よく聞けよ」ウッドはみんなを睨にらみつけながら言った。
「我われ々われは去年クィディッチ杯はいに勝つはずだったんだ。間違いなく最強のチームだった。残念ながら、我々の力ではどうにもならない事じ態たいが起きて……」
ハリーは申もうし訳わけなさにもじもじした。昨年のシーズン最後の試し合あいの時、ハリーは意い識しき不ふ明めいで、医い務む室しつにいた。グリフィンドールは選手一人欠けつ場じょうのまま、この三百年来、最悪という大敗北に泣いた。