ウッドは平へい静せいを取り戻すのに、一いっ瞬しゅん間を置いた。前回の大敗北がウッドをいまでも苦しめているに違いない。
「だから、今年はいままでより厳きびしく練習したい……よーし、行こうか。新しい戦せん術じゅつを実じっ践せんするんだ」
ウッドは大声でそう言うなり、箒ほうきをぐいとつかみ、先頭を切って更こう衣い室しつから出ていった。他の選手たちは、足を引きずり、欠伸あくびを連れん発ぱつしながらあとに続いた。
ずいぶん長い間更衣室にいたので、競きょう技ぎ場じょうの芝しば生ふにはまだ名な残ごりの霧きりが漂ただよってはいたが、太陽はもうしっかり昇のぼっていた。ピッチの上を歩きながら、ハリーはロンとハーマイオニーがスタンドに座っているのを見つけた。
「まだ終わってないのかい」ロンが信じられないという顔をした。
「まだ始まってもいないんだよ。ウッドが新しい動きを教えてくれてたんだ」
ロンとハーマイオニーが大おお広ひろ間まから持ち出してきたマーマレード・トーストを、ハリーは羨うらやましそうな目で見た。
箒ほうきにまたがり、ハリーは地面を蹴けって空中に舞まい上がった。冷たい朝の空気が顔を打ち、ウッドの長たらしい演えん説ぜつよりずっと効こう果か的てきな目覚ましだった。クィディッチ・ピッチにまた戻ってきた。なんてすばらしいんだろう。ハリーはフレッドやジョージと競きょう争そうしながら競技場の周まわりを全ぜん速そく力りょくで飛び回った。
「カシャッカシャッて変な音がするけど、なんだろ」
コーナーを回り込みながらフレッドが言った。
ハリーがスタンドのほうを見ると、コリンだった。最さい後こう部ぶの座ざ席せきに座って、カメラを高く掲かかげ、次から次と写真を撮とりまくっている。人ひと気けのない競技場で、その音が異い常じょうに大きく聞こえた。