ハリーはロックハートの姿が見えなくなるまで待って、それからロンを茂しげみの中から引ひっ張ぱり出し、ハグリッドの小屋の戸口まで連れていった。そして慌あわただしく戸を叩たたいた。
ハグリッドがすぐに出てきた。不ふ機き嫌げんな顔だったが、客が誰だかわかったとたん、パッと顔が輝かがやいた。
「いつ来るんか、いつ来るんかと待っとったぞ。――さあ入った、入った――実はロックハート先生がまーた来たかと思ったんでな」
ハリーとハーマイオニーはロンを抱かかえて敷しき居いをまたがせ、一部屋しかない小屋に入った。片かた隅すみには巨大なベッドがあり、反対の隅には楽しげに暖だん炉ろの火が爆はぜていた。ハリーはロンを椅い子すに座らせながら、手て短みじかに事じ情じょうを説明したが、ハグリッドはロンのナメクジ問題にまったく動じなかった。
「出てこんよりは出たほうがええ」
ロンの前に大きな銅どうの洗せん面めん器きをポンと置き、ハグリッドは朗ほがらかに言った。
「ロン、みんな吐はいっちまえ」
「止まるのを待つほか手がないと思うわ」
洗面器の上に屈かがみ込こんでいるロンを心配そうに見ながらハーマイオニーが言った。
「あの呪のろいって、ただでさえ難むずかしいのよ。まして杖つえが折おれてたら……」
ハグリッドはいそいそとお茶の用意に飛び回った。ハグリッドの犬、ボアハウンドのファングは、ハリーを涎よだれでべとべとにしていた。
「ねえ、ハグリッド、ロックハートは何の用だったの」
ファングの耳をカリカリ指で撫なでながらハリーが聞いた。
「井戸の中から水すい魔まを追おっ払ぱらう方法を俺おれに教えようとしてな」
唸うなるように答えながら、ハグリッドはしっかり洗い込まれたテーブルから、羽を半分むしりかけの雄おん鶏どりを取りのけて、ティーポットをそこに置いた。