「まるで俺が知らんとでもいうようにな。その上、自分が泣き妖よう怪かいとか何とかを追っ払った話を、さんざぶち上げとった。やっこさんの言っとることが一つでもほんとだったら、俺はへそで茶を沸わかしてみせるわい」
ホグワーツの先生を批ひ判はんするなんて、まったくハグリッドらしくなかった。ハリーは驚おどろいてハグリッドを見つめた。ハーマイオニーはいつもよりちょっと上うわずった声で反はん論ろんした。
「それって、少し偏へん見けんじゃないかしら。ダンブルドア先生は、あの先生が一番適てき任にんだとお考えになったわけだし――」
「ほかにだーれもおらんかったんだ」
ハグリッドは糖とう蜜みつヌガーを皿に入れて三人にすすめながら言った。ロンがその脇わきでゲボゲボと咳せき込こみながら洗せん面めん器きに吐はいていた。
「人ひとっ子こひとりおらんかったんだ。闇やみの魔ま術じゅつの先生をする者もんを探すのが難むずかしくなっちょる。だーれも進んでそんなことをやろうとせん。な みんなこりゃ縁えん起ぎが悪いと思いはじめたな。ここんとこ、だーれも長続きした者もんはおらんしな。それで やっこさん、誰に呪のろいをかけるつもりだったんかい」
ハグリッドはロンのほうを顎あごで指しながらハリーに聞いた。
「マルフォイがハーマイオニーのことを何とかって呼んだんだ。ものすごくひどい悪口なんだと思う。だって、みんなカンカンだったもの」
「ほんとにひどい悪口さ」
テーブルの下からロンの汗あせだらけの青い顔がひょいと現れ、嗄しゃがれ声で言った。
「マルフォイのやつ、ハーマイオニーのこと『穢けがれた血ち』って言ったんだよ、ハグリッド――」
ロンの顔がまたひょいとテーブルの下に消えた。次のナメクジの波が押し寄せてきたのだ。ハグリッドは大だい憤ふん慨がいしていた。