第8章 絶ぜつ命めい日びパーティ The Deathday Party
十月がやってきた。――校庭や城の中に湿った冷たい空気を撒まき散らしながら。
校医のマダム・ポンフリーは、先生にも生徒にも急に風か邪ぜが流行しだして大おお忙いそがしだった。校医特とく製せいの「元気げんき爆ばく発はつ薬ぐすり」はすぐに効きいた。ただし、それを飲むと数時間は耳から煙を出し続けることになった。
ジニー・ウィーズリーはこのところずっと具合が悪そうだったので、パーシーに無む理りやりこの薬を飲まされた。燃えるような赤あか毛げの下から煙がもくもく上がって、まるでジニーの頭が火事になったようだった。
銃じゅう弾だんのような大きな雨あめ粒つぶが、何日も続けて城の窓を打ち、湖は水かさを増し、花か壇だんは泥どろの河のように流れ、ハグリッドの巨大かぼちゃは、ちょっとした物もの置おき小ご屋やぐらいに大きく膨ふくれ上がった。しかし、オリバー・ウッドの定てい期き訓くん練れん熱ねつは濡ぬれも湿りもしなかった。だからこそ、ハロウィーンの数日前、ある土曜日の午後、嵐あらしの中を、ハリーは骨までずぶ濡れになり、泥どろ撥はねだらけになりながら、グリフィンドールの塔とうへと歩いていたわけだ。
雨や風のことは別にしても、今日の練習は楽しいとは言えなかった。スリザリン・チームの偵てい察さつをしてきたフレッドとジョージが、その目で、新しん型がたニンバスの速はやさを見てきたのだ。二人の報ほう告こくでは、スリザリン・チームはまるで垂すい直ちょく離り着ちゃく陸りくジェット機きのように、空中を縦じゅう横おうに突っ切る七つの緑の影かげとしか見えなかったという。
人ひと気けのない廊ろう下かをガボガボと水音を響ひびかせながら歩いていると、ハリーは誰かが自分と同じように物思いに耽ふけっているのに気づいた。