「つまり、いっぺんにすっきりとやってほしかったのは、首がすっぱりと落ちてほしかったのは、誰でもない、この私わたくしですよ。そうしてくれれば、どんなに痛い目を見ずに、辱はずかしめを受けずにすんだことか。それなのに……」
「ほとんど首無しニック」は手紙をパッと振ふって開き、憤ふん慨がいしながら読みあげた
当クラブでは、首がその体と別れた者だけに狩人かりうどとしての入会を許きょ可かしております。貴き殿でんにもおわかりいただけますごとく、さもなくば『首投げ騎き馬ば戦せん』や『首ポロ』といった狩かりスポーツに参加することは不ふ可か能のうであります。したがいまして、まことに遺い憾かんながら、貴殿は当方の要よう件けんを満みたさない、とお知らせ申もうし上げる次し第だいです。 敬けい具ぐ
パトリック・デレニー・ポドモア卿きょう
憤ふん然ぜんとしながら、ニックは手紙をしまい込こんだ。
「たった一センチの筋すじと皮でつながっているだけの首ですよ。ハリー これなら十分斬ざん首しゅされていると、普通ならそう考えるでしょう。しかし、なんたること、『すっぱり首無しポドモア卿』にとっては、これでも十分ではないのです」
「ほとんど首無しニック」は何度も深しん呼こ吸きゅうをし、やがて、ずっと落ち着いた調ちょう子しでハリーに聞いた。
「ところで――君はどうしました 何か私わたくしにできることは」
「ううん。ただで、ニンバスを七本、手に入れられるところをどこか知ってれば別だけど。対たい抗こう試じ合あいでスリ……」
ハリーの踝くるぶしのあたりから聞こえてくる甲かん高だかいニャーニャーという泣き声で、言葉がかき消されてしまった。見下ろすと、ランプのような黄色い二つの目とばっちり目が合った。ミセス・ノリス――管かん理り人にんのアーガス・フィルチが、生徒たちとの果はてしなき戦いに、いわば助手として使っている、骸がい骨こつのような灰色猫ねこだ。