信じられないような光こう景けいだった。地ち下か牢ろうは何百という、真しん珠じゅのように白く半はん透とう明めいのゴーストで一いっ杯ぱいだった。そのほとんどが、混み合ったダンス・フロアをふわふわ漂ただよい、ワルツを踊おどっていた。黒幕で飾かざられた壇だん上じょうでオーケストラが、三十本の鋸のこぎりでわなわな震ふるえる恐ろしい音楽を奏かなでている。頭上のシャンデリアは、さらに千本の黒い蝋ろう燭そくで群ぐん青じょう色いろに輝かがやいていた。まるで冷れい凍とう庫こに入り込こんだようで、三人の吐はく息が、鼻先に霧きりのように立ち上った。
「見て回ろうか」ハリーは足を暖めたくてそう言った。
「誰かの体を通り抜けないように気をつけろよ」ロンが心配そうに言った。
三人はダンス・フロアの端はしのほうを回り込むように歩いた。陰いん気きな修しゅう道どう女じょの一団や、ボロ服に鎖くさりを巻きつけた男がいたし、ハッフルパフに住む陽よう気きなゴーストの「太った修しゅう道どう士し」は、額ひたいに矢を突き刺さした騎き士しと話をしていた。スリザリンのゴーストで、全身銀色の血にまみれ、げっそりとした顔で睨にらんでいる「血ちみどろ男だん爵しゃく」は、他のゴーストたちが遠巻きにしていたが、ハリーはそれも当然だと思った。
「あーっ、いやだわ」ハーマイオニーが突とつ然ぜん立ち止まった。
「戻もどって、戻ってよ。『嘆なげきのマートル』とは話したくないの……」
「誰だって」
急いで後戻りしながらハリーが聞いた。
「あの子、三階の女子トイレに取とり憑ついているの」ハーマイオニーが答えた。
「トイレに取り憑いてるって」
「そうなの。去年一年間、トイレは壊こわれっぱなしだったわ。だって、あの子が癇かん癪しゃくを起こして、そこら中、水みず浸びたしにするんですもの。わたし、壊れてなくたってあそこには行かなかったわ。だって、あの子が泣いたり喚わめいたりしてるトイレに行くなんて、とってもいやだもの」
「見て。食べ物だ」ロンが言った。