ダンブルドアはブツブツと不ふ思し議ぎな言葉をつぶやき、ミセス・ノリスを杖つえで軽く叩たたいた。が、何事も起こらない。ミセス・ノリスは、つい先日剥はく製せいになったばかりの猫のように見えた。
「――そう、非常によく似た事件がウグドゥグで起こったことがありました。次々と襲おそわれる事件でしたね。私わたくしの自伝に一いち部ぶ始し終じゅう書いてありますが。私わたくしが町の住人にいろいろな魔ま除よけを授さずけましてね、あっという間に一いっ件けん落らく着ちゃくでした」
壁かべのロックハートの写真が本人の話に合わせていっせいに頷うなずいていた。一人はヘアネットを外はずすのを忘れていた。
ダンブルドアがようやく体を起こし、やさしく言った。
「アーガス、猫は死んでおらんよ」
ロックハートは、これまで自分が未み然ぜんに防いだ殺人事件の数を数えている最中だったが、慌あわてて数えるのをやめた。
「死んでない」フィルチが声を詰まらせ、指の間からミセス・ノリスを覗のぞき見た。
「それじゃ、どうしてこんなに――こんなに固まって、冷たくなって」
「石になっただけじゃ」
ダンブルドアが答えた「やっぱり 私わたくしもそう思いました」とロックハートが言った。
「ただし、どうしてそうなったのか、わしには答えられん……」
「あいつに聞いてくれ」
フィルチは涙で汚れ、まだらに赤くなった顔でハリーのほうを見た。
「二年生がこんなことをできるはずがない」ダンブルドアはきっぱりと言った。
「最も高度な闇やみの魔ま術じゅつをもってして初めて……」
「あいつがやったんだ。あいつだ」
ぶくぶく弛たるんだ顔を真まっ赤かにして、フィルチは吐はき出すように言った。