「あー、よろしい」先生が噛かみ締しめるように語りだした。「さて……『秘ひ密みつの部へ屋や』とは……」
「皆さんも知ってのとおり、ホグワーツは一千年以上も前――正確な年号は不明であるからにして――その当時の、もっとも偉い大だいなる四人の魔女と魔法使いたちによって、創そう設せつされたのであります。創設者の名前にちなみ、その四つの学がく寮りょうを、次のように名づけたのであります。すなわち、ゴドリック・グリフィンドール、ヘルガ・ハッフルパフ、ロウェナ・レイブンクロー、そしてサラザール・スリザリン。彼らはマグルの詮せん索さく好きな目から遠く離はなれたこの地に、ともにこの城を築きずいたのであります。なぜならば、その時代には魔法は一般の人々の恐れるところであり、魔女や魔法使いは多大なる迫はく害がいを受けたからであります」
先生はここで一ひと息いき入れ、漠ばく然ぜんとクラス全体を見つめ、それから続きを話しだした。
「数年の間、創設者たちは和わ気き藹あい々あいで、魔法力を示した若者たちを探し出しては、この城に誘いざなって教育したのであります。しかしながら、四人の間に意見の相そう違いが出てきた。スリザリンと他たの三人との亀き裂れつは広がっていった。スリザリンは、ホグワーツには選せん別べつされた生徒のみが入学を許されるべきだと考えた。魔法教育は、純じゅん粋すいに魔法族の家か系けいにのみ与えられるべきだという信しん念ねんを持ち、マグルの親を持つ生徒は学ぶ資し格かくがないと考えて、入学させることを嫌ったのであります。しばらくして、この問題をめぐり、スリザリンとグリフィンドールが激はげしく言い争い、スリザリンが学校を去ったのであります」
ビンズ先生はここでまたいったん口を閉じた。口をすぼめると、しわくちゃな年寄り亀かめのような顔になった。