「言っておきましょう。そんなものは存在しない」
ビンズ先生がノートをパラパラとめくりながら言った。
「『部屋』などない、したがって怪物はおらん」
「でも、先生」シェーマス・フィネガンだ。
「もし『部屋』がスリザリンの継承者によってのみ開けられるなら、ほかの誰も、それを見つけることはできない、そうでしょう」
「ナンセンス。オッフラハーティ君」ビンズ先生の声がますます険けわしくなった。
「歴れき代だいのホグワーツ校長、女校長先生方が、何も発見しなかったのだからして――」
「でも、ビンズ先生」パーバティ・パチルがキンキン声を出した。
「そこを開けるのには、闇やみの魔ま術じゅつを使わないといけないのでは――」
「ミス・ペニーフェザー、闇の魔術を使わないからといって、使えないということにはならない」ビンズ先生がピシャッと言い返した。
「繰くり返しではありますが、もしダンブルドアのような方が――」
「でも、スリザリンと血がつながっていないといけないのでは……。ですから、ダンブルドアは――」
ディーン・トーマスがそう言いかけたところで、ビンズ先生はもうたくさんだとばかり、びしりと打ち切った。
「以上、おしまい。これは神しん話わであります 部屋は存在しない スリザリンが、部屋どころか、秘密の箒ほうき置おき場ばさえ作った形けい跡せきはないのであります こんなバカバカしい作り話をお聞かせしたことを悔くやんでおる。よろしければ歴史に戻もどることとする。実じっ態たいのある、信ずるに足る、検けん証しょうできる事実であるところの歴史に」
ものの五分もしないうちに、クラス全員がいつもの無む気き力りょく状じょう態たいに戻もどってしまった。