「サラザール・スリザリンって、狂った変人だってこと、それは知ってたさ」
授じゅ業ぎょうが終わり、夕食前に寮りょうにカバンを置きにいく生徒で廊ろう下かはごった返していたが、人混ごみをかき分けながら、ロンがハリーとハーマイオニーに話しかけた。
「でも、知らなかったなあ、例の純じゅん血けつ主しゅ義ぎのなんのってスリザリンが言いだしたなんて。僕ぼくならお金をもらったって、そんなやつの寮に入るもんか。はっきり言って、組分け帽ぼう子しがもし僕をスリザリンに入れてたら、僕、汽き車しゃに飛び乗ってまっすぐ家に帰ってたな……」
ハーマイオニーも「そう、そう」と頷うなずいたが、ハリーは何も言わなかった。胃い袋ぶくろがドスンと落ち込こんだような気持の悪さだった。
組分け帽子が、ハリーをスリザリンに入れることを本気で考えたということを、ハリーはロンにもハーマイオニーにも一度も話していなかった。一年前、帽子をかぶった時、ハリーの耳元で聞こえた囁ささやき声を、ハリーは昨日きのうのことのように覚えている。
「君は偉い大だいになれる可か能のう性せいがあるんだよ。そのすべては君の頭の中にある。スリザリンに入れば間違いなく偉大になる道が開ける……」
しかし、スリザリンが、多くの闇やみの魔法使いを卒業させたという評ひょう判ばんを聞いていたハリーは、心の中で「スリザリンはダメ」と必ひっ死しで思い続けていた。すると帽子が「よろしい、君がそう確かく信しんしているなら……むしろグリフィンドール」と叫さけんだのだった。
人ひと波なみに流されていく途と中ちゅう、コリン・クリービーがそばを通った。
「やー、ハリー」
「やぁ、コリン」ハリーは機き械かい的てきに答えた。
「ハリー、ハリー、僕のクラスの子が言ってたんだけど、君って……」
しかし、コリンは小さすぎて、人波に逆さからえず、大おお広ひろ間まのほうに流されていった。