「焼やけ焦こげだ あっちにも――こっちにも――」ハリーが言った。
「来てみて 変だわ……」ハーマイオニーが呼んだ。
ハリーは立ち上がって、壁の文字のすぐ脇わきにある窓に近づいていった。ハーマイオニーは一番上の窓ガラスを指ゆび差さしている。二十匹あまりのクモが、ガラスの小さな割われ目からガザガザと先を争って這はい出そうとしていた。慌あわてたクモたちが全部一本の綱つなを上っていったかのように、クモの糸が長い銀色の綱のように垂たれ下がっている。
「クモがあんなふうに行動するのを見たことある」ハーマイオニーが不ふ思し議ぎそうに言った。
「ううん」ハリーが答えた。「ロン、君は ロン」
ハリーが振ふり返ると、ロンはずっとかなたに立っていて、逃げ出したいのを必ひっ死しでこらえているようだった。
「どうしたんだい」ハリーが聞いた。
「僕ぼく――クモが――好きじゃない」ロンの声が引きつっている。
「まあ、知らなかったわ」ハーマイオニーが驚おどろいたようにロンを見た。
「クモなんて、『魔ま法ほう薬やく』で何回も使ったじゃない……」
「死んだやつならかまわないんだ」
ロンは、窓だけには目を向けないように気をつけながら言った。
「あいつらの動き方がいやなんだ……」
ハーマイオニーがクスクス笑った。
「何がおかしいんだよ」ロンはむきになった。
「わけを知りたいなら言うけど、僕が三つの時、フレッドのおもちゃの箒ほうきの柄えを折おったんで、あいつったら僕の――僕のテディ・ベアをバカでかい大おお蜘ぐ蛛もに変えちゃったんだ。考えてもみろよ。いやだぜ。熊の縫ぬいぐるみを抱いてる時に、急に脚あしがニョキニョキ生はえてきて、そして……」