「いいえ、そんなことないわ」ハーマイオニーが言った。
「ポリジュース薬やくが少し必要なだけよ」
「それ、何」ロンとハリーが同時に聞いた。
「数週間前、スネイプがクラスで話してた――」
「『魔ま法ほう薬やく』の授じゅ業ぎょう中ちゅうに、僕たち、スネイプの話を聞いてると思ってるの もっとましなことをやってるよ」ロンがブツブツ言った。
「自分以外の誰かに変へん身しんできる薬なの。考えてもみてよ わたしたち三人で、スリザリンの誰か三人に変身するの。誰もわたしたちの正体を知らない。マルフォイはたぶん、何でも話してくれるわ。いまごろ、スリザリン寮りょうの談話室で、マルフォイがその自じ慢まん話ばなしの真っ最さい中ちゅうかもしれない。それさえ聞ければ」
「そのポリジュースなんとかって、少し危あぶなっかしいな」ロンがしかめっ面つらをした。
「もし、元に戻もどれなくて、永久にスリザリンの誰か三人の姿のままだったらどうする」
「しばらくすると効きき目は切れるの」ハーマイオニーがもどかしげに手を振ふった。
「むしろ材料を手に入れるのがとっても難しい。『最も強力な薬』という本にそれが書いてあるって、スネイプがそう言ってたわ。その本、きっと図書室の『禁きん書しょ』の棚たなにあるはずだわ」
「禁書」の棚の本を持ち出す方法はたった一つ、先生のサイン入りの許きょ可か証しょうをもらうことだった。
「でも、薬を作るつもりはないけど、そんな本が読みたいって言ったら、そりゃ変だって思われるだろう」ロンが言った。
「たぶん」ハーマイオニーはかまわず続けた。
「理り論ろん的てきな興きょう味みだけなんだって思い込こませれば、もしかしたらうまくいくかも……」
「なーに言ってるんだか。先生だってそんなに甘くないぜ」ロンが言った。
「――でも……騙だまされるとしたら、よっぽど鈍にぶい先生だな……」