「宿題。ワガワガの狼男が私わたくしに敗北したことについての詩を書くこと 一番よく書けた生徒にはサイン入りの『私わたしはマジックだ』を進しん呈てい」
みんなが教室から出ていきはじめた。ハリーは教室の一番後ろに戻り、そこで待たい機きしていたロン、ハーマイオニーと一いっ緒しょになった。
「用意は」ハリーがつぶやいた。
「みんないなくなるまで待つのよ」ハーマイオニーは神しん経けいをピリピリさせていた。
「いいわ……」
ハーマイオニーは紙切れを一枚しっかり握にぎりしめ、ロックハートのデスクに近づいていった。ハリーとロンがすぐあとからついていった。
「あの――ロックハート先生」ハーマイオニーは口ごもった。
「私、あの――図書室からこの本を借かりたいんです。参考に読むだけです」
ハーマイオニーは紙を差し出した。微かすかに手が震ふるえている。
「問題は、これが『禁きん書しょ』の棚たなにあって、それで、どなたか先生にサインをいただかないといけないんです。――先生の『グールお化ばけとのクールな散さん策さく』に出てくる、ゆっくり効きく毒どく薬やくを理り解かいするのに、きっと役に立つと思います……」
「あぁ、『グールお化けとのクールな散策』ね」ロックハートは紙を受け取り、ハーマイオニーににっこりと笑いかけながら言った。「私わたしの一番のお気に入りの本と言えるかもしれない。おもしろかった」
「はい。先生」ハーマイオニーが熱を込こめて答えた。
「本当にすばらしいわ。先生が最後のグールを、茶ちゃ濾こしで引っ掛かけるやり方なんて……」
「そうね、学年の最さい優ゆう秀しゅう生せいをちょっと応おう援えんしてあげても、誰も文もん句くは言わないでしょう」
ロックハートはにこやかにそう言うと、とてつもなく大きい孔く雀じゃくの羽は根ねペンを取り出した。
「どうです。素す敵てきでしょう」
ロンの呆あきれ返った顔をどう勘かん違ちがいしたか、ロックハートはそう言った。
「これは、いつもは本のサイン用なんですがね」
とてつもなく大きい丸まる文も字じですらすらとサインをし、ロックハートはそれをハーマイオニーに返した。