「危あぶなかったな ハリー」ジョージが棍こん棒ぼうを手に、ハリーのそばを猛もうスピードで通り過ぎ、ブラッジャーをスリザリンめがけて打ち返そうとした。ジョージがエイドリアン・ピュシーめがけて強きょう烈れつにガツンとブラッジャーを叩たたくのを、ハリーは見ていた。ところが、ブラッジャーは途と中ちゅうで向きを変え、またしてもハリーめがけてまっしぐらに飛んできた。
ハリーはひょいと急きゅう降こう下かしてかわし、ジョージがそれをマルフォイめがけて強打した。ところが、ブラッジャーはブーメランのように曲線を描えがき、ハリーの頭を狙ねらい撃うちしてきた。
ハリーはスピード全開で、ピッチの反対側めがけてビュンビュン飛んだ。ブラッジャーがあとを追って、ビュービュー飛んでくる音が、ハリーの耳に入った。
――いったいどうなってるんだろう ブラッジャーがこんなふうに一人の選手だけを狙うなんてことはなかった。なるべくたくさんの選手を振ふり落とすのがブラッジャーの役目のはずなのに……。
ピッチの反対側でフレッド・ウィーズリーが待ち構かまえていた。フレッドが力まかせにブラッジャーをかっ飛ばした。それにぶつからないよう、ハリーは身をかわし、ブラッジャーは逸それていった。
「やっつけたぞ」
フレッドが満足げに叫さけんだ。が、そうではなかった。まるでハリーに磁じ力りょくで引きつけられたかのように、ブラッジャーはまたもやハリーめがけて突とっ進しんしてくる。しかたなくハリーは全ぜん速そく力りょくでそこから離はなれた。
雨が降ふりだした。大おお粒つぶの雨がハリーの顔に降りかかり、メガネをピシャピシャと打った。いったいゲームそのものはどうなっているのか、ハリーにはさっぱりわからなかったが、解かい説せつ者しゃのリー・ジョーダンの声が聞こえてきた。
「スリザリン、リードです。六〇対〇」