「闇の罠わながここに仕し掛かけられています。それが起こる時、ハリー・ポッターはここにいてはいけないのです。家に帰って。ハリー・ポッター、家に帰って。ハリー・ポッターはそれにかかわってはいけないのでございます。危険すぎます――」
「ドビー、いったい誰が」
ドビーがまた水差しで自分をぶったりしないよう、手首をしっかりつかんだまま、ハリーが聞いた。
「今度は誰がそれを開いたの 以前に開いたのは誰だったの」
「ドビーには言えません。言えないのでございます。ドビーは言ってはいけないのです」
しもべ妖精はキーキー叫さけんだ。「家に帰って。ハリー・ポッター、家に帰って」
「僕はどこにも帰らない」ハリーは激はげしい口く調ちょうで言った。
「僕ぼくの親友の一人はマグル生まれだ。もし『部へ屋や』が本当に開かれたのなら、彼女が真っ先にやられる――」
「ハリー・ポッターは友達のために自分の命を危き険けんにさらす」ドビーは悲ひ劇げき的てきな恍こう惚こつ感かんで呻うめいた。「なんと気け高だかい なんと勇ゆう敢かんな でも、ハリー・ポッターは、まず自分を助けなければいけない。そうしなければ。ハリー・ポッターはけっして……」
ドビーは突とつ然ぜん凍こおりついたようになり、コウモリのような耳がピクピクした。ハリーにも聞こえた。外の廊ろう下かをこちらに向かってくる足音がする。
「ドビーは行かなければ」
しもべ妖よう精せいは恐きょう怖ふに戦おののきながらつぶやいた。パチッと大きな音がしたとたん、ハリーの手は空くうをつかんでいた。ハリーは再びベッドに潜もぐり込こみ、医い務む室しつの暗い入口に目を向けた。足音がだんだん近づいてくる。