「静まれ 静まらんか」スネイプが怒ど鳴なった。
「薬を浴びた者は『ぺしゃんこ薬』をやるからここへ来い。誰の仕し業わざか判はん明めいした暁あかつきには……」
マルフォイが急いで進み出た。鼻が小さいメロンほどに膨れ、その重みで頭を垂たれているのを見て、ハリーは必ひっ死しで笑いをこらえた。クラスの半分は、ドシンドシンとスネイプの机の前に重い体を運んだ。棍こん棒ぼうのようになった腕うでを、だらりとぶら下げている者、唇くちびるが巨大に膨れ上がって、口をきくこともできない者。そんな中で、ハリーは、ハーマイオニーがするりと地下牢教室に戻もどってきたのを見た。ローブの前のほうが盛もり上がっている。
みんなが解げ毒どく剤ざいを飲み、いろいろな「膨れ」が収おさまった時、スネイプはゴイルの大鍋の底を浚さらい、黒くろ焦こげの縮ちぢれた花火の燃え滓かすをすくい上げた。急にみんなしーんとなった。
「これを投げ入れた者が誰かわかった暁には」スネイプが低い声で言った。「我わが輩はいが、間違いなくそやつを退たい学がくにさせてやる」
ハリーは、いったい誰なんだろうという表情――どうぞそう見えますように――を取り繕つくろった。スネイプがハリーの顔をまっすぐに見み据すえていた。それから十分後に鳴った終しゅう業ぎょうベルが、どんなにありがたかったかしれない。
三人が急いで「嘆なげきのマートル」のトイレに戻もどる途と中ちゅう、ハリーは、二人に話しかけた。
「スネイプは僕ぼくがやったってわかってるよ。バレてるよ」
ハーマイオニーは、大おお鍋なべに新しい材料を放ほうり込こみ、夢む中ちゅうでかき混まぜはじめた。
「あと二週間ででき上がるわよ」とうれしそうに言った。
「スネイプは君がやったって証しょう明めいできやしない。あいつにいったい何ができる」
ロンがハリーを安心させるように言った。
「相手はスネイプだもの。何か臭におうよ」
ハリーがそう言ったとき、煎せんじ薬ぐすりがブクブクと泡あわ立だった。