ハリーは、むちゃくちゃに腹が立って、自分がどこに行こうとしているのかさえほとんど意い識しきせず、躓つまずきながら廊ろう下かを歩いた。結けっ局きょく、何か大きくて固い物にぶつかって、ハリーは仰あお向むけに床に転ころがってしまった。
「あ、やあ、ハグリッド」ハリーは見上げながら挨あい拶さつした。
雪にまみれたウールのバラクラバ頭ず巾きんで、頭から肩まですっぽり覆おおわれてはいたが、厚手木綿モールスキンのオーバーを着て、廊下をほとんど全部ふさいでいるのは、まぎれもなくハグリッドだ。手て袋ぶくろをした巨大な手の一方に、鶏にわとりの死し骸がいをぶら下げている。
「ハリー、大だい丈じょう夫ぶか」ハグリッドはバラクラバを引き下げて話しかけた。
「おまえさん、なんで授業に行かんのかい」
「休きゅう講こうになったんだ」ハリーは床から起き上がりながら答えた。
「ハグリッドこそ何してるの」
ハグリッドはダランとした鶏を持ち上げて見せた。
「殺やられたのは今学期になって二羽目だ。狐きつねの仕し業わざか、『吸きゅう血けつお化ばけ』か。そんで、校長先生から鶏とり小ご屋やの周まわりに魔法をかけるお許しをもらわにゃ」
ハグリッドは雪がまだらについたぼさぼさ眉まゆ毛げの下から、じっとハリーを覗のぞき込こんだ。
「おまえさん、ほんとに大丈夫か カッカして、なんかあったみたいな顔しとるが」
ハリーはアーニーやハッフルパフ生が、いましがた自分のことを何と言っていたか、口にすることさえ耐たえられなかった。
「何でもないよ」ハリーはそう答えた。
「ハグリッド、僕ぼく、もう行かなくちゃ。次は「変へん身しん術じゅつ」だし、教科書取りに帰らなきゃ」
その場を離はなれたものの、ハリーはまだアーニーの言ったことで頭が一いっ杯ぱいだった。