「……ハリーのはずがねえです。俺おれは魔ま法ほう省しょうの前で証しょう言げんしたってようがす……」
「ハグリッド、わしは――」
「……先生さま、間違ってなさる。俺は知っとるです。ハリーは絶ぜっ対たいそんな――」
「ハグリッド」ダンブルドアは大きな声で言った。「わしはハリーがみんなを襲おそったとは考えておらんよ」
「ヘッ」手に持った鶏にわとりがぐにゃりと垂たれ下がった。
「へい。俺は外で待ってますだ。校長先生」
そして、ハグリッドはきまり悪そうにドシンドシンと出ていった。
「先生、僕ぼくじゃないとお考えなのですか」
ハリーは祈いのるように繰くり返した。ダンブルドアは机の上に散らばった、鶏の羽を払はらい退のけていた。
「そうじゃよ、ハリー」ダンブルドアはそう言いながらも、また陰いん鬱うつな顔をした。
「しかし、君には話したいことがあるのじゃ」
ダンブルドアは長い指の先を合わせ、何事か考えながらハリーをじっと見ていた。ハリーは落ち着かない気持でじっと待った。
「ハリー、まず、君に聞いておかねばならん。わしに何か言いたいことはないかの」
やわらかな口く調ちょうだった。
「どんなことでもよい」
ハリーは何を言ってよいかわからなかった。マルフォイの叫さけびを思い出した。「次はおまえたちの番だぞ、『穢けがれた血ち』め」それから、「嘆なげきのマートル」のトイレでフツフツ煮にえているポリジュース薬やく。さらに、ハリーが二回も聞いた正体の見えない声。ロンが言ったことを思い出した。「誰にも聞こえない声が聞こえるのは、魔法界でも狂きょう気きの始まりだって思われてる」そして、みんなが自分のことを何と言っていたかを思い浮うかべた。自分はサラザール・スリザリンと何らかのかかわりがあるのではないかという恐れが募つのっていること……。
「いいえ。先生、何もありません」ハリーが答えた。