ところが、作戦第一号はハーマイオニーの言ったとおりに、苦もなく進行した。これにはハリーもロンも驚きょう嘆たんした。クリスマス・ディナーのあと、二人で誰もいなくなった玄げん関かんホールに隠かくれ、クラッブとゴイルを待ち伏ぶせした。スリザリンのテーブルに、たった二人残ったクラッブとゴイルは、デザートのトライフルの四皿目をガツガツ平らげていた。ハリーはチョコレートケーキを、階段の手て摺すりの端はしにちょんと載のせておいた。大おお広ひろ間まからクラッブとゴイルが出てきたので、ハリーとロンは、正面の扉とびらの脇わきに立っている鎧よろいの陰かげに急いで隠れた。
クラッブが大喜びでケーキを指ゆび差さしてゴイルに知らせ、二つとも引っつかんだのを見て、ロンが有う頂ちょう天てんになってハリーに囁ささやいた。
「あそこまでバカになれるもんかな」
ニヤニヤとバカ笑いしながら、クラッブとゴイルはケーキを丸ごと大きな口に収おさめた。しばらくは二人とも、「もうけた」という顔で意い地じ汚きたなくモゴモゴ口を動かしていた。それから、そのまんまの表情で、二人ともパタンと仰あお向むけに床に倒れた。
一番難むずかしい一ひと幕まくは、ホールの反対側にある物もの置おきに二人を隠すことだった。バケツやモップの間に二人を安全にしまい込こんだあと、ハリーはゴイルの額ひたいを覆おおっているごわごわの髪を二、三本、えいっと引き抜いた。ロンは、クラッブの髪を数本引っこ抜いた。二人の靴くつも失しっ敬けいした。
なにしろハリーたちの靴では、クラッブ、ゴイル・サイズの足には小さすぎるからだ。それから、自分たちのやり遂とげたことがまだ信じられないまま、二人は「嘆なげきのマートル」のトイレへと全ぜん速そく力りょくで駆かけだした。
ハーマイオニーが大おお鍋なべをかき混まぜている小部屋から、もくもくと濃こい黒い煙が立ち昇のぼり、二人はほとんど何も見えなかった。ローブをたくし上げて鼻を覆おおいながら、二人は小部屋の戸をそっと叩たたいた。