「胃い薬ぐすりだ」ロンが呻うめいた。二人は振ふり向きもせず、スリザリンの談だん話わ室しつを端はしから端まで一いち目もく散さんに駆かけ抜け、石の扉とびらに猛もう然ぜんと体当たりし、廊ろう下かを全力疾しっ走そうした。――なにとぞマルフォイが何にも気づきませんように――と二人は祈いのった。ハリーはゴイルのダボ靴ぐつの中で足がズルズル滑すべるのを感じたし、自分が縮ちぢんでいくので、ローブをたくし上げなければならなかった。二人は階段をドタバタと駆け上がり、暗い玄げん関かんホールにたどり着いた。クラッブとゴイルを閉じ込こめて鍵かぎを掛かけた物もの置おきの中から、激はげしくドンドンと戸を叩たたくこもった音がしている。物置の戸の外側に靴を置き、ソックスのまま全ぜん速そく力りょくで大だい理り石せきの階段を上り、二人は「嘆なげきのマートル」のトイレに戻もどった。
「まあ、まったくの時間のムダではなかったよな」ロンがゼイゼイ息を切らしながら、トイレの中からドアを閉めた。
「襲おそっているのが誰なのかはまだわからないけど、明あ日すパパに手紙を書いてマルフォイの応おう接せつ間まの床下を調べるように言おう」
ハリーはひび割われた鏡かがみで自分の顔を調べた。普ふ段だんの顔に戻っていた。メガネを掛かけていると、ロンがハーマイオニーの入っている小部屋の戸をドンドン叩いていた。
「ハーマイオニー、出てこいよ。僕ぼくたち君に話すことが山ほどあるんだ――」
「帰って」ハーマイオニーが叫さけんだ。
ハリーとロンは顔を見合わせた。
「どうしたんだい」ロンが聞いた。「もう元の姿に戻ったはずだろ。僕たちは……」
「嘆きのマートル」が急にするりとその小部屋の戸から出てきた。こんなにうれしそうなマートルを、ハリーは初めて見た。
“还好,不是完全浪费时间,”罗恩喘着气说,回身关上盥洗室的门,“我知道我们还是没有弄清是谁发动了这些攻击,但是我明天要写信给我爸,叫他去搜查一下马尔福家的客厅下面。”