「これ、何事」
ハリーはテーブルに着き、ベーコンから紙吹雪を払はらいながら二人に聞いた。
ロンが口をきくのもアホらしいという顔で、先生たちのテーブルを指ゆび差さした。部屋の飾かざりにマッチした、けばけばしいピンクのローブを着たロックハートが、手を挙あげて「静せい粛しゅくに」と合あい図ずしているところだった。ロックハートの両側に並ぶ先生たちは、石のように無表情だった。ハリーの席せきから、マクゴナガル先生の頬ほおがヒクヒク痙けい攣れんするのが見え、スネイプときたら、たったいま、誰かが大ビーカーになみなみと「骨ほね生はえ薬ぐすり」を飲ませたばかりという顔をしていた。
「バレンタインおめでとう」ロックハートは叫さけんだ。
「いままでのところ四十六人の皆さんが私わたくしにカードをくださいました。ありがとう そうです。皆さんをちょっと驚おどろかせようと、私わたくしがこのようにさせていただきました。――しかも、これがすべてではありませんよ」
ロックハートがポンと手を叩くと、玄げん関かんホールに続くドアから、無ぶ愛あい想そうな顔をした小こ人びとが十二人ぞろぞろ入ってきた。それもただの小人ではない。ロックハートが全員に金こん色じきの翼つばさをつけ、ハープを持たせていた。
「私わたくしの愛すべき配達キューピッドです」ロックハートがにっこり笑った。
「今日は学校中を巡じゅん回かいして、皆さんのバレンタイン・カードを配達します。そしてお楽しみはまだまだこれからですよ 先生方もこのお祝いのムードにはまりたいと思っていらっしゃるはずです さあ、スネイプ先生に『愛あいの妙みょう薬やく』の作り方を見せてもらってはどうです ついでに、フリットウィック先生ですが、『魅み惑わくの呪じゅ文もん』について、私わたくしが知っているどの魔法使いよりもよくご存ぞん知じです。素そ知らぬ顔して憎いですね」
フリットウィック先生はあまりのことに両手で顔を覆おおい、スネイプのほうは、「『愛あいの妙みょう薬やく』をもらいにきた最初のやつには、毒どく薬やくを無む理りやり飲ませてやる」という顔をしていた。
「ハーマイオニー、頼むよ。君まさか、その四十六人に入ってないだろうな」
大おお広ひろ間まから最初の授じゅ業ぎょうに向かう時、ロンが聞いた。ハーマイオニーは急に、時間割はどこかしらと、鞄かばんの中を夢中になって探しはじめ、答えようとしなかった。