動く螺ら旋せん階段を降おり、二人は廊ろう下かの怪獣像ガーゴイルぞうの脇わきに出た。暗くなりかけていた。リドルが立ち止まったのでハリーも止まって、リドルを見つめた。リドルが何か深しん刻こくな考え事をしているのがハリーにもよくわかった。リドルは唇くちびるを噛かみ、額ひたいにしわを寄せている。それから突とつ然ぜん何事か決心したかのように、急いで歩きだした。ハリーは音もなく滑すべるようにリドルについていった。玄げん関かんホールまで誰にも会わなかったが、そこで、長いふさふさした鳶とび色いろの髪かみと髭ひげを蓄たくわえた、背の高い魔法使いが大だい理り石せきの階段の上からリドルを呼び止めた。
「トム、こんな遅おそくに歩き回って、何をしているのかね」
ハリーはその魔法使いをじっと見た。いまより五十歳さい若いダンブルドアに間違いない。
「はい、先生、校長先生に呼ばれましたので」リドルが言った。
「それでは、早くベッドに戻もどりなさい」
ダンブルドアは、ハリーがよく知っている、あの心の中まで見通すような眼差まなざしでリドルを見つめた。
「このごろは廊ろう下かを歩き回らないほうがよい。例の事件以来……」
ダンブルドアは大きくため息をつき、リドルに「おやすみ」と言って、その場を立ち去った。
リドルはその姿が見えなくなるまで見ていたが、それから急いで石段を下り、まっすぐ地ち下か牢ろうに向かった。ハリーも必ひっ死しに追つい跡せきした。
しかし残念なことに、リドルは隠かくれた通路や、秘ひ密みつのトンネルに行ったのではなく、スネイプが「魔ま法ほう薬やく学がく」の授じゅ業ぎょうで使う地下牢教室に入った。松明たいまつは点ついていなかったし、リドルが教室のドアをほとんど完全に閉めてしまったので、ハリーにはリドルの姿がやっと見えるだけだった。リドルはドアの陰かげに立って身じろぎもせず、外の通路に目を凝こらしている。