グリフィンドールの談だん話わ室しつは、このごろいつでも混こみ合っていた。六時以い降こう、他に行き場がなかったのだ。それに、話すことはあり余あまるほどあったので、その結果、談話室は、真ま夜よ中なか過ぎまで人がいることが多かった。
ハリーは夕食後すぐに 「透とう明めいマント」をトランクから取り出してきて、談話室に誰もいなくなるまでマントの上に座って時を待った。フレッドとジョージが、ハリーとロンに「爆ばく発はつスナップ」の勝負を挑いどみ、ジニーは、ハーマイオニーのお気に入りの席に座り、沈しずみきってそれを眺ながめていた。ハリーとロンはわざと負け続けて、ゲームを早く終わらせようとしたが、フレッド、ジョージ、ジニーがやっと寝しん室しつに戻もどった時には、とうに十二時を過ぎていた。
ハリーとロンは男子寮りょう、女子寮に通じるドアが、二つとも遠くのほうで閉まる音を確たしかめ、それから「マント」を取り出して羽は織おり、肖しょう像ぞう画がの裏うらの穴を這はい登った。
先生方にぶつからないようにしながら城を抜けるのは、今度もひと苦労だった。やっと玄げん関かんホールにたどり着き、樫かしの扉とびらの閂かんぬきを外はずし、蝶ちょう番つがいが軋きしんだ音をたてないよう、そーっと扉を細く開けて、その隙すき間まを通り、二人は月つき明あかりに照らされた校庭に踏ふみ出した。
「ウン、そうだ」黒々と広がる草むらを大おお股またで横切りながら、ロンが出し抜けに言った。
「森まで行っても、跡あとをつけるものが見つからないかもしれない。あのクモは、森なんかに行かなかったかもしれない。だいたいそっちの方向に向かって移動していたように見えたことは確たしかだけど、でも……」
ロンの声がそうであってほしいというふうにだんだん小さくなっていった。
ハグリッドの小屋にたどり着いた。真っ暗な窓がいかにももの悲しく、寂さびしかった。ハリーが入口の戸を開けると、二人の姿を見つけたファングが狂ったように喜んだ。ウォン、ウォンと太く轟とどろくような声で鳴かれたら、城中の人間が起きてしまうのではないかと気が気でなく、二人は急いで暖だん炉ろの上の缶かんから、糖とう蜜みつヌガーを取り出し、ファングに食べさせた。――ファングの上下の歯がしっかりくっついた。