ハリーはクモの通った跡あとはないかとヘッドライトで照てらされた地面を、眩まぶしそうに目を細めて見回した。しかしクモの群むれは、ギラギラする明りから急いで逃げ去ってしまっていた。
「見失っちゃった」ハリーが言った。「さあ、探しにいかなくちゃ」
ロンは何も言わなかった。身動きもしなかった。ハリーのすぐ後ろ、地面から二、三メートル上の一点に、目が釘くぎづけになっている。顔が恐きょう怖ふで土つち気け色いろだ。
振ふり返る間もなかった。カシャッカシャッと大きな音がしたかと思うと、何か長くて毛むくじゃらなものが、ハリーの体を鷲わしづかみにして持ち上げた。ハリーは逆さかさまに宙ちゅう吊づりになった。恐きょう怖ふに囚とらわれ、もがきながらも、ハリーはまた別のカシャッカシャッという音を聞いた。ロンの足が宙に浮うくのが見え、ファングがクィンクィン、ワォンワォン鳴き喚わめいているのが聞こえた。――次の瞬しゅん間かん、ハリーは暗い木こ立だちの中にさーっと運び込こまれた。
逆さ吊りのまま、ハリーは自分を捕とらえているものを見た。六本の恐ろしく長い、毛むくじゃらの脚あしが、ザックザックと突き進み、その前の二本の脚でハリーをがっちり挟はさみ、その上に黒光りする一対の鋏はさみがあった。後ろに、もう一匹同じ生き物の気配がする。ロンを運んでいるに違いない。森の奥へ奥へと行進していく。ファングが三匹めの怪かい物ぶつから逃のがれようと、キャンキャン鳴きながら、じたばたもがいているのが聞こえた。ハリーは叫さけびたくても叫べなかった。あの空き地の、車のところに声を置き忘れてきたらしい。
どのぐらいの間、怪物に挟まれていたのだろうか、真っ暗くら闇やみが突とつ然ぜん薄うす明あかるくなり、地面を覆おおう木の葉の上に、クモがうじゃうじゃいるのが見えた。首を捻ひねって見ると、だだっ広い窪くぼ地ちの縁ふちにたどり着いたのが見える。木を切り払はらった窪地の中を星明りが照らし出し、ハリーがこれまで目にしたことがない、世にも恐ろしい光こう景けいが飛び込んできた。
“我们失去踪迹了。”他说,“来,我们去找蜘蛛..”
罗恩没有说活,也没有动弹。他眼睛死死盯着哈利身后,离地面十英尺高的地方。他的脸色铁青,活生生地写着恐惧。