明日になれば、自分たちが何もしなくても、すべての謎なぞが解とけるだろうとハリーは思ったが、マートルと話す機き会かいがあるなら逃のがすつもりはなかった。――そして、うれしいことに、その機会がやってきた。午前の授じゅ業ぎょうも半なかば終わり、次の「魔ま法ほう史し」の教室まで引いん率そつしていたのがギルデロイ・ロックハートだった。
ロックハートは、これまで何度も「危き険けんは去った」と宣せん言げんし、そのたびに、たちまちそれが間違いだと証しょう明めいされてきたのだが、今回は自じ信しん満まん々まんで、生徒を安全に送り届けるためにわざわざ廊ろう下かを引率していくのは、まったくのむだだと思っているようだった。髪かみもいつものような輝かがやきがなく、五階の見廻りで一ひと晩ばん中起きていた様子ようすだった。
「私わたくしの言うことをよく聞いておきなさい」生徒を廊ろう下かの曲り角かどまで引率してきたロックハートが言った。「哀あわれにも石にされた人たちが最初に口にする言葉は『ハグリッドだった』です。まったく、マクゴナガル先生が、まだこんな警けい戒かい措そ置ちが必要だと考えていらっしゃるのには驚おどろきますね」
「そのとおりです、先生」ハリーがそう言ったので、ロンは驚おどろいて教科書を取り落とした。
「どうも、ハリー」ハッフルパフ生せいが、長い列を作って通り過ぎるのをやり過ごしながら、ロックハートが優ゆう雅がに言った。
「つまり、私わたくしたち、先生というものは、いろいろやらなければならないことがありましてね。生徒を送ってクラスに連れていったり、一ひと晩ばん中見み張はりに立ったりしなくたって手て一いっ杯ぱいですよ」
「そのとおりです」ロンがピンと来てうまくつないだ。
「先生、引いん率そつはここまでにしてはいかがですか。あと一つだけ廊ろう下かを渡ればいいんですから」
「実は、ウィーズリー君、私わたしもそうしようかと思う。戻もどって次の授じゅ業ぎょうの準じゅん備びをしないといけないんでね」
そしてロックハートは足早に行ってしまった。