その日は、ハリーの生しょう涯がいで最悪の日だったかもしれない。ロン、フレッド、ジョージたちとグリフィンドールの談だん話わ室しつの片かた隅すみに腰こし掛かけ、互いに押し黙だまっていた。パーシーはそこにはいなかった。ウィーズリーおじさん、おばさんにふくろう便を飛ばしにいったあと、自分の部屋に閉じこもってしまった。
午後の時間が、こんなに長かったことはいまだかつてなく、これほど混こみ合っているグリフィンドールの談話室が、こんなに静かだったことも、いまだかつてなかった。
日にち没ぼつ近く、フレッドとジョージは、そこにじっとしていることがたまらなくなって、寝しん室しつに上がっていった。
「ジニーは何か知っていたんだよ、ハリー」
職しょく員いん室しつの洋よう服ふく掛かけに隠かくれて以来、初めてロンが口をきいた。
「だから連れていかれたんだ。パーシーのバカバカしい何かの話じゃなかったんだ。何か『秘ひ密みつの部へ屋や』に関することを見つけたんだ。きっとそのせいでジニーは――」
ロンは激はげしく目をこすった。
「だって、ジニーは純じゅん血けつだ。ほかに理由があるはずがない」
ハリーは夕日を眺ながめた。地ち平へい線せんの下に血のように赤い太陽が沈しずんでいく。――最悪だ。こんなに落ち込こんだことはない。何かできないのか……なんでもいい――。
「ハリー」ロンが話しかけた。「ほんのわずかでも可か能のう性せいがあるだろうか。つまり――ジニーがまだ――」
ハリーは、何と答えてよいかわからなかった。ジニーがまだ生きているとはとうてい思えない。
「そうだ ロックハートに会いにいくべきじゃないかな」ロンが言った。
「僕ぼくたちの知っていることを教えてやるんだ。ロックハートはなんとかして『秘密の部屋』に入ろうとしているんだ。それがどこにあるか、僕たちの考えを話して、バジリスクがそこにいるって、教えてあげよう」