他にいい考えも思いつかなかったし、とにかく何かしたいという思いで、ハリーは、ロンの考えに賛成した。談話室にいたグリフィンドール生せいは、すっかり落ち込み、ウィーズリー兄弟が気の毒どくで何も言えず、二人が立ち上がっても止めようとしなかったし、二人が談話室を横切り、肖しょう像ぞう画がの出入口から出ていくのを、誰も止めはしなかった。
ロックハートの部屋に向かって歩くうちに、あたりが闇やみに包つつまれはじめた。ロックハートの部屋の中は取り込こみ中らしい。カリカリ、ゴツンゴツンに加えて慌あわただしい足音が聞こえた。
ハリーがノックすると、中が急に静かになった。それからドアがほんの少しだけ開き、ロックハートの目が覗のぞいた。
「あぁ……ポッター君……ウィーズリー君……」ドアがまたほんのわずか開いた。
「私わたしはいま、少々取り込み中なので、急いでくれると……」
「先生、僕ぼくたち、お知らせしたいことがあるんです」とハリーが言った。
「先生のお役に立つと思うんです」
「あー――いや――いまはあまり都つ合ごうが――」やっと見える程てい度どのロックハートの横顔が、非常に迷めい惑わくそうだった。
「つまり――いや――いいでしょう」
ロックハートはドアを開け、二人は中に入った。
部屋の中はほとんどすべて取り片づけられていた。床には大きなトランクが二個置いてあり、片方にはローブが、翡ひ翠すい色いろ、藤ふじ色いろ、群ぐん青じょう色いろなど、慌あわててたたんで突っ込んであり、もう片方には本がごちゃ混まぜに放ほうり込まれていた。壁かべ一いっ杯ぱいに飾かざられていた写真は、いまや机の上にいくつか置かれた箱に押し込まれていた。
「どこかへいらっしゃるのですか」ハリーが聞いた。
「うー、あー、そう」ロックハートはドアの裏うら側がわから等とう身しん大だいの自分のポスターを剥はぎ取り、丸めながらしゃべった。
「緊きん急きゅうに呼び出されて……しかたなく……行かなければ……」
「僕の妹はどうなるんですか」ロンが愕がく然ぜんとして言った。