リドルは、石せき像ぞうの巨大な足の指のあたりの床を指ゆび差さした。ハリーが「嘆なげきのマートル」のトイレで見つけた小さな黒い日記が、開かれたまま置いてあった。一いっ瞬しゅん、ハリーはいったいどうしてここにあるんだろうと不ふ思し議ぎに思ったが――いや、もっと緊きん急きゅうにしなければならないことがある。
「トム、助けてくれないか」ハリーはジニーの頭をもう一度持ち上げながら言った。
「ここからジニーを運び出さなけりゃ。バジリスクがいるんだ……。どこにいるかはわからないけど、いまにも出てくるかもしれない。お願い、手伝って……」
リドルは動かない。ハリーは汗あせだくになって、やっとジニーの体を半分床から持ち上げ、杖つえを拾ひろうのにもう一度体を屈かがめた。
杖がない。
「君、知らないかな、僕ぼくの――」
ハリーが見上げると、リドルはまだハリーを見つめていた。――すらりとした指でハリーの杖をくるくるもてあそんでいる。
「ありがとう」ハリー