「十一歳さいの小こ娘むすめのたわいない悩み事を聞いてあげるのは、まったくうんざりだったよ」
リドルの話は続く。
「でも僕ぼくは辛しん抱ぼう強く返事を書いた。同情してあげたし、親切にもしてあげた。ジニーはもう夢む中ちゅうになった。『トム、あなたぐらい、あたしのことをわかってくれる人はいないわ……なんでも打ち明けられるこの日記があってどんなにうれしいか……まるでポケットの中に入れて運べる友達がいるみたい……』」
リドルは声をあげて笑った。似つかわしくない、冷たい甲かん高だかい笑いだった。ハリーは背せ筋すじがぞくっとした。
「自分で言うのもどうかと思うけど、ハリー、僕は必要となれば、いつでも誰でも惹ひきつけることができた。だからジニーは、僕に心を打ち明けることで、自分の魂たましいを僕に注ぎ込んだんだ。ジニーの魂、それこそ僕のほしいものだった。僕はジニーの心の深しん層そうの恐れ、暗い秘ひ密みつを餌え食じきにして、だんだん強くなった。おチビちゃんとは比ひ較かくにならないぐらい強力になった。十分に力が満みちた時、僕の秘密をウィーズリーのチビに少しだけ与え、僕の魂をおチビちゃんに注ぎ込みはじめた……」
「それはどういうこと」ハリーは喉のどがカラカラだった。
「まだ気づかないのかい ハリー・ポッター」リドルの口調は柔やわらかだ。
「ジニー・ウィーズリーが『秘ひ密みつの部へ屋や』を開けた。学校の雄おん鶏どりを絞しめ殺したのも、壁に脅きょう迫はくの文字を書きなぐったのも、ジニー。四人の『穢けがれた血ち』や『できそこないスクイブ』の飼かい猫ねこに、『スリザリンの蛇ヘビ』を仕し掛かけたのもジニーだ」