「まさか」ハリーはつぶやいた。
「そのまさかだ」リドルは落ち着き払はらっていた。
「ただし、ジニーは初めのうち、自分がやっていることをまったく自覚していなかった。おかげで、なかなかおもしろかった。しばらくして日記に何を書きはじめたか、君に読ませてやりたかったよ……前よりずっとおもしろくなった……。親しん愛あいなるトム――」
ハリーの愕がく然ぜんとした顔を眺ながめながら、リドルは空そらで、読みあげはじめた。
「あたし、記き憶おく喪そう失しつになったみたい。ローブが鶏にわとりの羽だらけなのに、どうしてそうなったのかわからないの。ねえ、トム、ハロウィーンの夜、自分が何をしたか覚えてないの。でも、猫ねこが襲おそわれて、あたしのローブの前にペンキがべっとりついてたの。ねえ、トム、パーシーがあたしの顔色がよくないって、なんだか様子ようすがおかしいって、しょっちゅうそう言うの。きっとあたしを疑うたがってるんだわ……。今日もまた一人襲われたのに、あたし、自分がどこにいたか覚えてないの。トム、どうしたらいいの あたし、気が狂ったんじゃないかしら……。トム、きっとみんなを襲ってるのは、あたしなんだわ」
ハリーは、爪つめが手のひらに食い込こむほどギュッと拳こぶしを握にぎりしめた。
「バカなジニーのチビが、日記を信用しなくなるまでに、ずいぶん時間がかかった。しかし、とうとう変だと疑いはじめ、捨すてようとした。そこへ、ハリー、君が登とう場じょうした。君が日記を見つけたんだ。僕ぼくは最高にうれしかったよ。こともあろうに、君が拾ひろってくれた。僕が会いたいと思っていた君が……」
「それじゃ、どうして僕に会いたかったんだ」
怒いかりが体中を駆かけ巡めぐり、声を落ち着かせることさえ難むずかしかった。