「助けて。助けて。誰か、誰か」ハリーは夢む中ちゅうで口走った。
バジリスクの尾が、また大きくひと振ふりして床の上を掃はいた。ハリーが身をかわしたその時、何か柔やわらかいものがハリーの顔に当たった。
バジリスクの尾が、「組くみ分わけ帽ぼう子し」を吹ふき飛ばしてハリーの腕うでに放ほうってよこしたのだ。ハリーはそれをしっかりつかんだ。もうこれしか残されていない。最後の頼みの綱つなだ。ハリーは帽子をぐいっとかぶり、床にぴったりと身を伏ふせた。その頭上を掃くように、バジリスクの尾がまた通り過ぎた。
「助けて…………助けて……」帽子の中でしっかりと目を閉じ、ハリーは祈いのった。「お願い、助けて」
答えはなかった。しかし、誰かの見えない手がギュッと絞しぼったかのように、帽子が縮ちぢんだ。
固くてずしりと重いものがハリーの頭のてっぺんに落ちてきた。ハリーは危うくノックアウトされそうになり、目から火花を飛ばしながら、帽子のてっぺんをつかんでぐいっと脱ぬいだ。長くて固い何かが手に触ふれた。
帽子の中から、眩まばゆい光を放はなつ銀の剣つるぎが出てきた。柄えには卵たまごほどもあるルビーが輝かがやいている。
「小童を殺せ 鳥にかまうな 小童はすぐ後ろだ 臭いだ――嗅かぎ出だせ」
ハリーはすっくと立って身構えた。バジリスクは胴体をハリーのほうに捻ひねりながら柱を叩たたきつけ、とぐろをくねらせながら鎌首をもたげた。バジリスクの頭がハリーめがけて落ちてくる。巨大な両りょう眼がんから血を流しているのが見える。丸ごとハリーを飲み込こむほど大きく口をカッと開けているのが見える。ずらりと並んだ、ハリーの剣つるぎほど長い鋭するどい牙きばが、ヌメヌメと毒どく々どくしく光って……。
バジリスクがやみくもにハリーに襲おそいかかってきた。ハリーは危あやうくかわし、蛇へびは壁かべにぶつかった。再び襲ってきた。今度は、裂さけた舌した先さきがハリーの脇わき腹ばらに打ち当たった。ハリーは諸もろ手てで剣を、高々と掲かかげた。
三度目の攻こう撃げきは、狙ねらい違たがわず、まともにハリーをとらえていた。ハリーは全体重を剣に乗せ、剣の鍔つばまで届くほど深く、毒どく蛇じゃの口こう蓋がいにズブリと突き刺さした。
蛇怪的尾巴又扫过来了。哈利赶紧一低头,一个柔软的东西击中了他的脸。